高桐先生はビターが嫌い。
知らない時間。

******



とある金曜日の夕方。

マンションに帰って、さっきスーパーで買ってきた食材を袋から取り出して。

ふと時計に目を遣った。

…今の時刻は、18時過ぎ。

今日の夕飯は、ラザニア。

昨日の夜、高桐先生に何が食べたいか問いかけると、返ってきたその答えがラザニアだった。

…ラザニアとか、作ったことないけど。

そう思いながら、一旦キッチンから離れてなんとなくテレビを点ける。

何か音が無いと、寂しいから。


だけど、そう思いながら作り始めようとしていると…


その時。

ふいに玄関で、チャイムが鳴った。



「はーい?」



高桐先生かな。

いつもと似たような時間帯にチャイムが鳴るから、あたしはそう思っていつも通りに出迎えようとドアを開ける。



「おかえりなさ、」



しかし…

そう言いなが、思わず笑顔を浮かべると…



「どーもぉ」

「!」



ドアを開けて、出迎えたその瞬間。

相手が高桐先生だと完全に思い込んでいたのに。

そこにいたのは、まさかの後藤先生だった。



「…ご、後藤先生」



…ちょっと、ビックリした。

珍しいな、後藤先生が今みたいな時間帯に来るなんて。

そう思いながら、あたしは突然の後藤先生の登場に、目をぱちくりさせながら問いかける。



「…ど、どうしたんですか、珍しいですね」



しかしあたしがそう言うと、後藤先生が言う。



「いや、さ。明日休みじゃんと思って」

「そうですね。二連休」

「いきなりだけどさ、明日ちょっと付き合ってくんない?」

「!」
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