高桐先生はビターが嫌い。
「あのっ…それって、」



しかし、あたしが先生を呼びとめようとすると…



「…あっ、ちょっとごめん」

「!」



その時…突如、高桐先生のスマホが鳴って、誰かから着信がかかってきた。

高桐先生はスマホを手に取ってあたしにそう言うと、すぐに電話にでてしまう。

…まぁ、いいんだけどね別に。あとで聞けばいいし。

っていうかタイミングよ……。



「…もしもし?あれ、唯香?」

「!」

「え、なにお前スマホは?」

「……」



…唯香さん!?

キッチンに戻りながらあたしが何気なく高桐先生の声に耳を傾けていると、ふいにそんな名前が耳に飛び込んで来た。

唯香さん…後藤先生の彼女さんだから別に平気なんだろうけど、高桐先生とも仲が良いみたいだから、こうして電話とかかかってくると気になる…。

でもなんで今…いきなり…。

あたしはそう思いながらキッチンでラザニアを作りつつ、こっそり耳を高桐先生の方に傾けて…。



「…あ、そうなんだ。どうりで…。篠樹?いや、今は一緒にいないけど。どした?」

「…、」

「…うん。…うん。…あー…それは、」

「…?」



高桐先生は唯香さんといったい何を話しているのか。

ふいに困ったようにそう言いながらあたしの方に視線を遣ると、言葉を続ける。



「…俺も無理かな。…え、何でって…」

「…?」

「…いやそういうんじゃないよ。ないけどさ。……いやもうわかったよ。行くよ。後でな、」

「!」



高桐先生はそう言うと、少し呆れたように電話を切る。

でも、一方そんな会話を盗み聞きしていたあたしは、そんな高桐先生の言葉に少し不安になって…。

…行くって、どこに…?

そう思って、口を開きかけたら、その前に高桐先生が電話を切るなりあたしに言った。



「…ごめん、日向さん」

「!」
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