高桐先生はビターが嫌い。

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車の中から、外を眺める。

今日は、翌日の土曜日。後藤先生と約束をしていた日。

今はどこに向かっているのか…後藤先生が車を走らせている。

…昨日は、あれから結局高桐先生を見送ってしまったあたし。

一瞬、引き留めかけたけど…「何でもないです」とか言ってしまった。

何でもないわけないのに…。

そう思いながら、あたしはふいに後藤先生に目を遣って、問いかけた。



「…ところで、どこに向かってるんですか?」

「うーん…どこがいいかなぁ。正直考え中なんだよねぇ」

「エ、」

「知ってる?奈央ちゃん。来週、陽太誕生日なんだよ」

「!!」



誕生日!?

え、何それ初耳!

あたしは思わぬ情報に驚いて目を見開くと、後藤先生に言う。



「え、知らないです初耳です!ら、来週のいつですか!?ってか、もしかして今日は高桐先生の誕生日プレゼントを2人で…!?」

「そう。選びに行こうかなぁって。来週の水曜日がアイツの誕生日だから。っていうか、ごめんね。昨日ちゃんと言うつもりが、途中で陽太が帰って来ちゃったから」



聞かれるとマズイでしょ?と、申し訳なさそうにしながら、後藤先生が言う。

…あ、そうか。だから後藤先生昨日…高桐先生が帰って来たのを気付いた瞬間、ガラにもなくあんなに焦ってたんだね。

でも、誕生日…高桐先生の…。一緒に祝えるんだ!

あたしはそう思うと嬉しくて、後藤先生に言った。



「でも、仲良いんですね!後藤先生と高桐先生!誕生日プレゼントを用意するなんて、」

「…、」



せっかく連れてきてもらったんだから、あたしも頑張っちゃおう。

昨日までの不安とか一旦置いておいて、高桐先生が凄く喜ぶものを…。
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