高桐先生はビターが嫌い。
あたしは窓の外を見つめながら、今度は高桐先生が喜びそうなプレゼントを考えてみる。

腕時計とか?でも、何気にかっこいいのつけてたしなぁ。

あ、じゃあサングラスとかって…!…使わないだろうなぁ。

だったらここはスニーカーを…。


……しかし、あたしがそうやって考えていると…



「…ふっ」

「え?」



ふいに突然、隣で運転中の後藤先生が何故か吹き出して、あたしが振り向くと後藤先生がちょっと笑いながら言った。



「や、ごめんごめん」

「ごめんってことは、今あたし見て笑いましたよねっ」

「ちがっ…いや、まぁそうなんだけど」

「当たってるじゃないですかっ」



あたしがそう言って拗ねる真似をすると、後藤先生が言葉を続けて言う。



「そうじゃなくてね。なんか、さっきまで元気なかったから。奈央ちゃん」

「!」

「なんでかなぁって思ってたけど、とりあえず安心したよ。陽太の誕生日のこと言った途端、さっきから楽しそうに何か考えてるからさ」



今日はいろいろ忘れて楽しもうな。

と、後藤先生が笑顔で言う。

…“楽しそうに”…。

そんな後藤先生の言葉を聞いて、一方のあたしは少し恥ずかしくなる。

…思わず笑顔になっちゃってたのが顔にでてたのか。

あたしはそう思いながら、とりあえず話を変えようと口を開いて言った。




「……で、でも、大丈夫なんですか?」

「え、何が?他の生徒に見られたりとかは無いようになるべく遠くの方には向かってるよ」

「あ、それもありますけど。…後藤先生の彼女さんですよ」

「…え、唯香?」



…いらんお節介なのかもしれないけど、唯香さん、後藤先生のことで悩んでるみたいだから…。
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