高桐先生はビターが嫌い。
後藤先生はそう言うけど、でも、あたしはそれでも心配で。
後藤先生の横で独り悩んでいたら、ふいに後藤先生があたしに言った。
「…簡単に騙すわりには、優しいんだね。奈央ちゃんて」
「え、」
「あ、もしかして奈央ちゃんも結構、陽太のこと気になってる?それでそんなに悩んでるのか」
後藤先生はそう言うと、「禁断の恋だね」なんてからかうように笑うから、あたしは思わず「違いますよ!」と首を横に振った。
違うんだよ…。
だって、あたしが通う学校に来るってことは。
少なからず、あたしの“孤独な部分”が見られてしまうということ。
しかも、隣の部屋に引っ越してきたんなら、尚更。
後藤先生は、あたしが話す内容よりも奥深くは聞いてこないけれど、高桐先生はどうだろう。
ああ…なんかもうヘタなことできないなぁ。
あたしがそう思っていたら、ようやく到着したコンビニの前。
中に入る前に、後藤先生があたしに言った。
「心配しなくたって平気だよ」
「え…」
「陽太は、そんなことで奈央ちゃんを怒ったり、ましてや嫌いになったりなんてしないから」
「!」
「きっと、誰よりも親身になって聴いてくれるはずだよ。“何でそんなことしてるのか”って」
ま、俺はこれ以上は聞かないけどな。
後藤先生はあたしにそう言うと、一足先に、コンビニの中へと入っていく。
「……、」
今…気のせいなのか、一瞬、心を見透かされたような気がした。
“何でそんなことしてるのか”
理由なんてきっと…いつも、言えない。