高桐先生はビターが嫌い。
新しい恋のハジマリ。
「合コンしない?」
「え、」
とある平日の休み時間。
次の授業の準備をするあたしに、ふと市川がそう言った。
その言葉にあたしが少しビックリして顔を上げると、市川が言う。
「何かさ、昨日の放課後そう言われて」
「?…誰から。ってか、合コンとか今はちょっと…」
「誰…っていうのはあたしもよくわからないんだけどね、昨日帰ろうとしたら門の前に超イケメンの大学生がいてさ!」
「うん、」
「でも知らない人だし、スルーしようとしたらいきなり声かけられたわけ。で…」
…市川が言うには、その大学生は後藤先生と知り合いらしく、用事があって来たみたいなんだけど、勝手に校内に入るわけにもいかず…で困っていたら丁度この学校の生徒である市川が通って呼びとめた…という流れらしい。
「…で、何でいきなり合コン?っていうかそれ目当てだったんじゃないの、その大学生」
そして市川の話にあたしがそうやって疑うと、市川が笑って言う。
「かもね。あたしもそう思った。でも、後藤先生に用事があったのはマジだったみたいよ。あたしが先生のところまで案内したら、ありがとうって言ってたし」
「ふーん?」
「何気にチャラい人なのかも。っていうか、日向は本当にいかないの?」
「行かないよ…市川だって、高桐先生のこと好きって言ってたじゃん」
「そりゃあ好きだけど。大学生との合コンくらいは行きたいでしょ」
市川はそう言うと、「日向も行けばいいのに~」なんて口を膨らませる。
…でも、あたしはこの前唯香さんのことで高桐先生と少し言い合いになっちゃったし。
それなのにあたしがホイホイ合コンに行くわけには…。
そう思うけど…
「でも、日向が行ってくれないと人数がなかなか揃わないんだよね。一応考えといてよ」
「…うん。一応ね」
あたしがその市川の言葉に頷くと、やがて授業開始のチャイムが鳴った…。