高桐先生はビターが嫌い。
…………



篠樹くんと、仲直りをして。

2人でキッチンに立って洗い物をしていたら、そのうちに陽ちゃんが帰って来た。



「ただいまー」

「あ、おかえりなさい」



あたしがそう言って、キッチンで迎えると。

疲れた顔の陽ちゃんが言う。



「…あ、無事に仲直りしたんだ」

「そ。ありがとね、陽ちゃん」

「っつか喧嘩しすぎ」



そう言って、眠たそうに欠伸をして。

冷蔵庫を開ける。

そして、何を思ったのか…陽ちゃんは冷蔵庫の中から“あるもの”を取り出して言った。



「篠樹、」

「ん?」

「これちょーだい」



そう言って、手に持ったのは。

陽ちゃんが普段は飲もうとしない缶ビール。

あまりにもその姿が珍しくて、あたしと篠樹くんはその言葉に、驚いて言う。



「え、どうしたの。陽ちゃんがビールを飲みたがるとか」

「普段のお前だったら絶対飲まんのに。や、別に1本くらいやるけどな」

「…、」



そう言って、2人して陽ちゃんの方を向けば。

陽ちゃんが、その缶を開けながら言った。



「……俺も合コン行きたい」

「え?」



突然、独りごとのようにそう言うから。

いきなりの言葉に、あたしの隣にいる篠樹くんが、余計に疑問を浮かべる。

らしくなくて、わからなくなる。



「え、お前合コン行きたいの?何で」

「…や、青春だし」

「??」



だけど、一方のあたしは…心当たりがあって。

……成功、したんだ。

そう思うと…思わず嬉しくて、口角を上げた。


これからが、楽しみね。

奈央ちゃん。
< 232 / 313 >

この作品をシェア

pagetop