高桐先生はビターが嫌い。
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「あーあ…また来てるよ…」



スマホの画面を見ながら、あたしはそう呟いて、大きなため息を吐く。

高桐先生と抱き合っている画像を送り付けられてから、あれから今日で三日後。

送り主は全くわからないまま、しかも変な“別れろ”なんていうメッセージも止まらない。


学校の廊下。

そんなスマホの画面を眺めるあたしの元に、市川がやって来て言った。



「よっ。日向。この前はどうだった?」

「…どうって?」

「コウマ君だよ。あれから2人で抜け出してたじゃん」



市川はそう言うと、ニマニマと。

あたしをからかうような笑みを浮かべて、返事を待つ。

…だけど実際、あれからすぐにカラオケの前で別れたし。

あたしがそう言うと、市川がつまらなそうに言う。



「ええー。何それ。で、結局何にも発展とかしてないわけ?」

「…してない。ってか、するわけないじゃん」



…あたしは、高桐先生のことが好きなんだし。

でも…。

あたしはそう思うと、だけどラインのことを思い出してはまた大きなため息を吐きそうになる。

…それに、あの時の…あの香水の甘い香り。

あれ、どこかで…。

そう思っていると。



「連絡先は交換してないの?コウマ君と」

「した。…させられた」

「で、一応連絡は毎日取り合ったりしてるんだ?」

「…してる。コウマ君って意外とマメみたいで」



学校の話を中心に、ラインのやり取りをしている。ここ数日は。

何か、無視するのも…気が引けるし。

あたしがそう言って、内心はあの例の画像のことを思い出していると…



「ふーん。付き合っちゃえばいいのに」

「なんで。あたしは先生のこと好きだし」

「でしょ?でもそれってあたしもそうだし。日向とコウマ君が付き合ったら、ライバルが一人減るじゃん」

「…」



市川はそう言うと、嬉しそうにニコニコと笑みを浮かべる。
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