高桐先生はビターが嫌い。

「何してんの?こんなとこで」

「!」



内心、「ヤバイなぁ」と思っていたら、高桐先生がそう問いかけながらあたしに近づいて来る。

そんな高桐先生の左手には、小さなコンビニの袋。

ああ、買い物をした後なのか。

あたしはそう思いながら、高桐先生に言う。



「あ…ちょっと、出かけてて」

「じゃあ今帰りなの?」

「う、うん…」

「えー、危なくない?もう22時過ぎてるのに」



高桐先生はあたしの言葉にそう言うと、ふと自身が身に着けている腕時計に目を遣る。

女性がこんな暗い中独りで歩いちゃダメでしょ。

なんて、そう言われるから。

これ、生徒だったらもっと怒られてるな。なんて、思ってしまった。



「…ごめんなさい」

「うん、無事ならいいけどね」



あたしがそう謝ると、高桐先生は「帰ろ」とあたしの隣に並ぶ。

ちなみに、今出会ったこのコンビニは、前に後藤先生と二人で入ったコンビニ。

さっきのアパート周辺に比べて、マンションに近づいてくると、街頭や人通りも多くなってきた。


…なんか、寒くなってきたな。


今日はワンピースだからあんまり厚着もできなくて、あたしがそう思って身震いしていると、それに気が付いたらしい高桐先生が言う。



「ん…寒い?」

「ちょっと。でも平気。マンションはもうすぐだし、」



しかし、あたしがそう言って、先を急ごうとすると…
< 25 / 313 >

この作品をシェア

pagetop