高桐先生はビターが嫌い。
…確かに、しばらく高桐先生と距離を置かなきゃいかないけれど、だからって他の人と…なんて気が進まない。

それに…あの迷惑なラインのことで、かなり落ち込んでるわけだし…実際。

あたしはそう思うと、コウマ君から目を逸らして言った。



「…ごめんなさい」

「!」

「あたし、好きな人いるから。本当にやめて」

「…」



そう言って、その場を後にしようとする。

だけど、その時…



「っ…じゃあ一瞬だけ」

「!」

「一瞬だけでいいから、付き合ってほしい。家まで送る…とかだけでもいいから」

「…?」



そう言って、あたしの手を取って。

その手をぎゅっと…優しく握るコウマ君。

…だけど一方、その不自然な必死さに…あたしはほんの少し…違和感を覚えて。


…なんか、今の。

好きな人に対するっていうよりも、まるで…。


そんなことを思いながら、その言葉に仕方なく頷こうとしたら。



「…あっ」

「?」



その時…コウマ君は“ある人の存在”に気が付いて、何故かその瞬間…握っていたあたしの手をパッと離した。

…あれ。今のって…。



「…あの、この前も…」



しかし、あたしが何気なく口を開いて言いかけたら…



「っ…じゃ、じゃあ…一緒に帰ろ、」

「!」



コウマ君はあたしの声が聞こえていないようで…あたしの言葉を遮ってそう言うと、あたしの手をまた取って学校を後にした。


…何で…?

もしかして、コウマ君って…

いや、でもそんなことは…まだ…。
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