高桐先生はビターが嫌い。
…………


ラインのトーク画面。

“高桐陽太”と表示されてあるそこに、一枚の画像を選ぶ。


仕事を早めに切り上げて、いつものマンションに来れば。

そこに丁度いた、学校から帰って来た2人。

コウマ君と奈央ちゃん。

コウマ君は、あたしが仕掛けた人だから。

陽ちゃんと奈央ちゃんの仲を壊すために。


ごめんね、奈央ちゃん。

可哀想なコ。

最初から黙って、独りでいればよかったのにね。


そう思いながら、不敵に笑って。

青天の空の下。

それを、陽ちゃんに送ろうとしたら…



「何やってんの」

「!?」



不意に、後ろから聞きなれた声に話しかけられて。

ビックリして、振り向けば。

そこには何故か、仕事帰りの…篠樹くんが、いて。



「し、篠樹くん…!?」

「…」



あまりにも険しい、何かを感じ取っているのか…目が、笑っていないから。

一瞬、バレたと思って。慌ててスマホの画面を隠せば。

篠樹くんが、あたしの目の前に歩み寄って来て言う。



「…最近、何か怪しいなぁって、思ってたんだよね。ずっと」

「…っ、何のこと、かな。あたしにはさっぱり…」

「でもそれ、スマホに答え隠れてんじゃね?」

「!」



そう言って、篠樹くんは。

どこまで知っているのか。どうして知っているのかもわからないまま。

あたしからいとも簡単にスマホを奪う。

でも、篠樹くんには知られたくなくて。

あたしはスマホを取り戻そうとするけれど…



「っ…ちょっと、やめてよ!」

「…あ、やっぱり。陽太に送ろうとしてんじゃん」

「!!」

「コウマと奈央ちゃんのツーショット」

「…っ」

「こんなことして何になんの、」
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