高桐先生はビターが嫌い。

「先生…!?」



…突然、ふわりと優しく包まれるあたたかな感触に、あたしは少しびっくりするけれど…

でも、また抱きしめてくれていることが嬉しすぎて、その背中に両腕を回そうとする。

だけど…



「…ごめんね、日向さん」

「…?」

「守ってあげられなくて、本当にごめん」



そう言って、より強くあたしを抱きしめると…言葉を続ける。



「嫌がらせ、されてたんだって?唯香に」

「!」

「さっき、唯香本人に聞いた。反省してたよ」

「え、」



高桐先生はそう言うと、まさかの唯香さんの様子を口にして…あたしが少しビックリする間、あたしの頭を優しく撫でる。

…唯香さんが…反省を…?



「何かね、篠樹が知ってたみたい。唯香がしてたこと。で、今唯香はすごい反省してる。でも本当にごめんね。俺、何にもしてあげられてない…」



高桐先生はそう言って、ふいに自身からあたしを離して、申し訳なさそうに…あたしを見つめる。

その目が…あまりにも悲しくて。



「…結局、日向さんを守ったのは篠樹の方、だし。俺は仕事ばっかり…」

「そんなことは……そもそも黙っていたあたしもあたし、だし」

「ううん。でも今日は日向さんが悲しい思いしてるかもしれないから、一緒にいるって決めた」



そう言うと、あまりにも真っ直ぐにあたしを見つめるから。

あたしは、その視線にドキッとして…思わず下を向く。

それってつまり…今夜、一緒に…ここで…

そう思って、独りで顔を赤くしていると…



「…あ、でも、明日も仕事だから、2時間くらいしか居られないけど」

「…」



ですよねー。

一瞬、物凄く期待してしまったけれど、高桐先生のそんな言葉に思わず落胆してしまった。

でも、笑った先生の顔が…可愛かったからいっか。
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