高桐先生はビターが嫌い。
「!…初めまして。私、日向奈央さんの…」
「ああ。聞いてるよ。教師の方ですよね?初めまして、奈央の父親の、日向武です」
そう言って、立派な名刺を渡される。
…生徒の父親っていうだけでも緊張するのに、バリバリ社長室内のこの雰囲気も緊張するな…。
そう思いながら、その名刺を受け取って。
「そんなに堅くならなくていいですよ」と、意外にもにこやかに日向さんがそう言ってくださるから。
堅くならないのは無理だけど、代わりに俺は引きっつっているであろう笑顔を浮かべる。
…日向さんのお父さんは、30代後半~40代前半…といったところだろうか。
なるほど。確かに、今もまだ働き盛りだよな…。
俺はそう思いながら、やがてさっそく三者面談の事について話し出した。
「あの、早速ですが…来月の、三者面談の…ことについて」
「…」
「今年は、お嬢様ももう高校三年生ですし、一度親子で話し合って頂きたくて。三者面談の前に」
「…」
「…あ、で、一応、こちらでその日程のプリントを作らせていただきましたので、」
ぜひ、目を通しておいて下さい。
しかし、俺がそう言おうとすると…
「…先生は…」
「…?」
「本当に、奈央の事が大事なんですね」
「!?」
日向さんはそう言って、俺に向かってニコリと微笑んだ…。