高桐先生はビターが嫌い。
…ほんの数か月だけど、そう思ったら、色んな思い出たちが溢れてきて。

その度に、涙も止まらなくなる。

やっぱり…と、何度も思う。

そう思って…また迷い始めてしまうあたしに、やがて体を離した高桐先生が…あたしの涙を指で拭いながら言った。



「……けど、俺は…信じる、ことにする」

「…?」

「こんなに誰かを好きになって、心の底から大事に思ったのって、奈央が初めてだから」

「!」

「何かの縁があって。しかも三回も!出会ってるんだよ」



また会えそうな気がしない?

高桐先生はそう言うと、少し笑って。

ぽんぽん、とあたしの頭に手を遣りながら、あたしを宥める。

…そのセリフは、確か、まだ高桐先生と出会ったばかりの頃に…。



「…俺、奈央のこと忘れないから、絶対」

「!」

「奈央も、俺のこと忘れないで、」

「…っ、」



あたしは、高桐先生のその言葉に、泣きながら頷いて。

もう泣き止んでいる高桐先生の向かいで、今度はあたしの涙が止まらなくなる。

そんなあたしに「泣き虫だな」なんて笑ってまた高桐先生が抱きしめるから。

あたしは、「先生もだよ」なんて言って笑った。


最後の夜は、高桐先生とくっついて…幸せな夜を過ごした。
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