高桐先生はビターが嫌い。
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そして、その翌朝。
出発当日。
お父さんとの約束通り、早朝に。
マンションの部屋の前の通路で、高桐先生や後藤先生に見送られるあたし。
「…ホントに行っちゃうんだな」
忘れ物が無いか、確認するあたしに後藤先生が寂しそうにそう言う。
下の駐車場には、もう既にお父さんが迎えに来ていて。
そんな言葉を発する後藤先生に、高桐先生が言った。
「だから、ずっとそう言ってたじゃん」
「でも早いなー、時間経つの」
そう言うと、「元気でね、奈央ちゃん」と。
それでも笑顔で手を振ってくれるから。
あたしもそんな後藤先生の言葉に頷いて、手を振り返す。
そして、一方の高桐先生は…
「ほら、お前も見送れっ」
「……」
後藤先生にそう言われて、高桐先生が黙ってあたしの目の前までやって来て。
…若干、お互いに目が腫れているような。
しかもあんなに泣いたのに、まだ泣き足りないのか…やっぱり寂しそうな、なんとも言えない高桐先生を目の前にすると、あたしはまた涙が込み上げてきてしまう。
…けど、決めたから。
それに、高桐先生が言っていたように、あたしも、また先生たちに会えるんじゃないかって信じてる。
「…先生、また会いましょうね」
「…ん」
「約束、」
そう言って、お互いに指切りをする。
だけど、指を離そうとしたその瞬間…
「奈央、」
「?」
不意に、名前を呼ばれて…顔を上げれば。
高桐先生の顔が、近づいてきて。
そう思ったその瞬間…
「…!」
柔らかい唇が、重なった。