高桐先生はビターが嫌い。
『おまけ(後藤先生目線)』
『おまけ(後藤先生目線)』
※作品の執筆中、ボツになった章の一コマです。
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“教師”というずっと憧れだった仕事が始まって、はや1週間が経過したある日。
日曜日の朝に寝ていると、暗闇の中で音がした。
「…?」
その音に、目を覚ますと。
何故かそこには、朝から俺の部屋に侵入している陽太の姿があって。
ちょっとビックリさせられた俺は、眠気眼で問いかけた。
「…何してんの?」
「!……あ、起こしちゃった?ごめん」
「じゃなくて。人の部屋で何してんのって」
俺は陽太にそう問いかけると、欠伸をしながらベッドから起き上がる。
俺の部屋に侵入している陽太の手には、俺がたまに被っているキャップがあって。
俺の問いかけに、陽太はそれを俺に見せながら言った。
「あ…コレ借りたくて」
「ああ、そういうこと。まぁ別にいいけど」
「ありがと」
俺が了承すると、陽太はそう言って早速部屋を出ていこうとする。
けど、タダで逃がすわけにはいかないなぁ。
何だかそんな陽太の行動が怪しく思えた俺は、そいつの背中を呼び止めるように言った。
「…どこか行くの?」
「!」
俺がそう聞くと、陽太が俺の方を振り向いて頷く。
「……うん」
「へぇ。どこに?」
「日向さんと……遊園地に」
「……は?」
陽太は何の躊躇いもなく俺にそう言うと、また、今度こそ部屋を出ていこうとする。
いや、けど待て待て!
その言葉に、思わず自分の耳を疑った俺は、再度そいつを引き留めて言う。
「え、今誰とっつった?“日向さん”とか言わなかった?俺の聞き間違い?」
「いや、日向さんとで合ってるよ。今日は俺、日向さんとデートだから」
そう言うと、「留守番よろしくね」とか言って、部屋を出て行くから。
まさかのそいつの言葉に、俺は独り驚きで言葉を無くしてしまう。
……いや、確かに、前々から奈央ちゃんのことを気に入ってる奴だったよ、陽太は。
けどそれは、奈央ちゃんが自分の“生徒”だと知らなかったからで。
全てを知ったら、「じゃあ俺は諦めなきゃ」とか、流石に心を入れ替えると思っていたのに。
あ…だから、“帽子”が必要なんだ。
「っ…陽太!」
俺はやがて部屋を飛び出すと、そのまますぐに陽太の部屋に入る。
すると、部屋にいた陽太は全身ミラーで自分の姿をチェックしている最中で。
そんな陽太を、俺は流石に放っておけなくて、言った。