高桐先生はビターが嫌い。
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そもそも、どうしてこんなことになってしまったのか。
それは今から、約二週間前に遡る…。
あたし、日向奈央は、現在高校二年生で、高級マンションの最上階に独り暮らし。
母親は幼い頃に他界。
父親は居るには居るけど、別居している上に普段は仕事に一生懸命で、今までまともに構ってもらった記憶が一切無い。
お金さえ与えればいいと思っているのか、毎月口座に大金を振り込まれ、きっと、あたし自身のことなんてめんどくさい対象になっているに違いない。
わざわざ口には出さないけれど。
大金なんかじゃなくて、大きな愛を感じてみたい。
それなのに、現実は上手くはいかず。
学校生活も満足のいかないものになっているあたしとしては、
唯一、人と楽しく居られる秘密の時間があった。
「アイリ、」
「!」
駅前の人混み。
もうすっかり暗くなった夜に、ふいに嘘の名前を呼ばれる。
久しぶりの声。
その声に顔を上げれば、あたしより5つ年上の男の人が、居て。
「コウ君!」
今日、その人のことを待っていたあたしは、
その声が嬉しくて顔を上げた。
ただ…本命じゃない相手。
寂しさを紛らわすためだけの、必要な人。
コウ君は、その中の一人。
「ごめん、遅くなった」
「ううん、平気だよ」
コウ君には、実は大事な彼女がいる。
けど、別にコウ君のことを本命として見ていないあたしは、それでもいい。
あたしは実は、毎晩こうして、とっかえひっかえでたくさんの男の人とデートしていたりする。
しかも、“アイリ”という偽名を使って、年齢も20歳と偽って。
誰でもいい。
本当は男でも女でも関係なくて、ただ、冷たくなった心に少しでも気付いてほしくて。
女には嫌われやすいから、男の人と毎日一緒に居て、気がついたら。
もう止められなくて、人肌に、こんなに依存していた。