高桐先生はビターが嫌い。
…俺達の生徒になるわけだしな。
最後の一言だけは心の中で言って、陽太を見る。
だけどその一方で、俺の言葉に納得がいかないらしい陽太。
こいつ、昔から意外と頑固だからな。
陽太は俺の言葉を聞くと、「…何で」と呟いた。
「…何か色んな理由があるのかもしれないじゃん」
「その色んな理由を悪い方向に考えてるのはお前だろ。っつかアイスうめぇ」
「それはっ………そう、だけど」
「っつか早く食え?溶け始めてんぞソレ」
「え?…あっ」
俺がそう言うと、慌ててチョコレートバーを再び口に含む陽太。
…思ってたよりも気に入ってんな。
俺はそいつのそんな様子を向かいから見ると、一応は親友として「どうするべきか…」と考えてみる。
や、でも、まだ俺が簡単に口を挟める…ことでもないか。そもそもアイリちゃんに結構重要な理由がありそうだし。
とりあえず何かあったら、二人のフォローくらいしておこう。
俺はそう考えながら、やがてチョコミントアイスを完食した。
「…ごちそうさま」
「え、早!」
「いや、お前が遅すぎるんだって」
ほんと、今まで何回…いや、何百回騙されてきても、それでもまだ変わらずに騙されやすいんだよな、こいつは。
その度に毎回毎回悔しがってんのに、そのクセ全然学ばねぇの。
そんなことを思いながら、今尚パソコンを続けていると、
その時ようやくチョコレートバーを完食したらしい陽太が、何かに気がついたように言った。
「…っ!!ね、ヤバイ!!」
「?…どした、」
「“アタリ”でた!」
「おー、すげぇじゃん。もう一本貰いに行けば?」
「……それは遠慮しておく」
相手が生徒じゃなければ、もちろん応援くらいしていたんだけどな。
俺は陽太の様子に独り吹き出すと、やがてパソコンを閉じた。