高桐先生はビターが嫌い。

******

その後、マンションを出るとあたし達は市川の車に戻った。

そしてまずはどこへ向かうのかと聞くと、最初は母校である高校らしい。

そこに行けば会えるかもしれない、と。



「なるほど」

「異動してなければね」

「その可能性も高いなー」

「でも!どこの学校に異動になったのか情報は手に入るよ!」



市川はそう言うと、さっそく車を走らせてくれる。



「…でも、ラインとかで連絡したほうが早いんじゃなくて?」

「んー…でもね、そっちでの連絡はそもそも全然してないんだよね…」

「ほんと奥手だな、日向は」

「う、うるさい」



それに、ちょっと不安もあるんだ。

確かにスマホがあるし、高桐先生の連絡先もまだ残ってはいる。

いるけど…もし、返って来なかったらって思うと…手紙みたいに。

…ああもう、先生に会いたいだけなのに。

あたしがそう思って窓の外の色を眺めていると、また市川が言った。



「高桐先生に会ったら、まず何ていうの?」

「え?んー…会いたかった!…みたいな?」

「ええ、何それフツーじゃん」

「ふ、フツーでいいじゃん」



あたしが市川の質問にそう答えるけど、市川はあたしの返答にそう言って笑う。

ってか、会えることが嬉しすぎて、会ったら何を言おうとか…はっきり言って考えてなかったんだよ。

あたしがそう思って改めて何を言おうか考えていると、やがて市川が車を停めて言った。



「ほら、着いたよ」

「!」
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