高桐先生はビターが嫌い。
3回目の出会い。
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…行きたくない。
マジで行きたくない。
学校に、行きたくない。
「…、」
「あれ、陽太スマホは?」
「…あっ!ダイニングの上だ!」
「早く~。遅刻すんだろ、」
「…」
…春休み明けの、4月上旬。
約二週間くらいの短い春休みは、あっという間に終わってしまって。
今日から、一学期がスタートする。
だけど今日から、噂によると“彼ら”も新生活が本格的にスタートするらしくて、
あたしは玄関のドアに耳を当てながら、二人の外での会話を静かに盗み聞いていた。
…あたしは朝からいったい何をやっているんだろう。
そう思いつつも、今、このドアを開けるわけにはいかなくて。
後々どうせ学校で会うことになるんだけど、いまこの瞬間に二人の目の前に現れるのは…何だか少し気が引けた。
「っし、陽太オッケー?」
「うん。あとは…うん。大丈夫、うん」
「じゃあ行くか。あー、っつか何か緊張すんな」
…なんて、そう言いながら。
だんだん二人の声がドア越しに遠退いていく。
行った……のかな?
あたしはそう思って玄関のドアを静かに開けると、さっきまでそこに居たであろう二人の姿は消えていた。