高桐先生はビターが嫌い。
そう言って、まるで少年のような笑顔を浮かべる高桐先生。
その言葉は、確かにずっと独りだったあたしにとっては、仲間ができたというか…嬉しい言葉で。
「俺も後藤先生も、隣にいるよ」って言ってくれるから、少しは、安心してしまう。
…だけどここまでは、みんなと“同じ言葉”。
全てを話したのは確かに高桐先生が初めてだったけど、なんとなく、あたしの感情を察知していた人だって、たくさんいたから。
そういう人たちにも、何度か言われていた。
『俺が力になるよ』
『だったら、ずーっと二人でいればいいじゃん』
『俺はそういう思い、アイリにはさせない』
…けど、そう言っていたのに。
結局みんな、あたしの傍にいるのが辛くなってやめたよね。
そんな言葉を並べて、カッコつける前によく考えてよ。
あたしは寂しかったんだよ。
“君だけ”に、傍にいてほしかったわけじゃない…。
あたしがそんなことを思っていると、高桐先生がふいに「夕飯一緒に食べようよ」と誘ってくれた。
その言葉に笑顔で頷いたあたしは、高桐先生の目にはどう映っていたのか…。
今はまだ、あたしは高桐先生を信じ切れていない…。