高桐先生はビターが嫌い。
そう言って、後藤先生が。
タコ焼きをひっくり返す手を止めて、あたしを見るから。
あたしは思わず、そんな後藤先生から目を逸らす。
けど、逸らしたところで今度は高桐先生と目が合って。
高桐先生も、同じようなことを問いかけてきた。
「…あ、それ俺もずっと気になってた。教室にいた時もう既に貼ってたよね。何?それ」
そう言うと、2人して、じーっとあたしを見つめてくる。
そんな2人の視線に、あたしは目を背けつつ言った。
「こ、これはっ…転んだんです」
「あ、そうなんだ。気を付けなよ。ね?」
しかし。高桐先生がそう納得しても、まだ納得してない様子の後藤先生が言う。
「え、けどそれだったら可笑しくない?転ぶんなら、普通腕とか足に怪我するんじゃない?」
「!」
「顔は自然と庇ってるはずだから、その傷を“転んだ”にするのは不自然だろ」
「!!」
はっきりそう言うと、後藤先生は。
あたしでも全く気が付かないところを指摘して、「本当は?」と聞いて来る。
そして一方、そんな指摘を横で聞いた高桐先生は、少し考えたあとに「そっか!」とやっと後藤先生の言葉を納得して…。