高桐先生はビターが嫌い。
「あの、さっきの物理のプリントなんですけど…」
「おお、あの復習のプリントだろ?明日提出だからな、しっかりやれよ」
「えっと…じゃなくて。もう1枚、欲しいんですけど」
あたしはそう言って、菅谷先生に目を遣る。
落書きされたので、とは言えないから。
けど、いきなりそんなことを言われた先生は、キョトン、とした顔をしていて。
「何で?」とでも言いたげな顔をしている。
……マズイな。さすがにバレるかな。
そしてあたしがそんな菅谷先生の反応にそう思っていたら、やがて菅谷先生が言った。
「え、どした?二人分の宿題でもするつもりか?」
「いや…そういうわけじゃ、」
「じゃ何?……あ、お前まさか…また落書きされたか!」
「!」
菅谷先生は、高桐先生が隣で聞いてるのにはっきりそう言うと、あたしを見る。
いや、そうなんだけど。大正解なんだけど。
でもそんなこと高桐先生には知られたくないし。
だからあたしが否定しようとしたら、その前に高桐先生が言った。
「…え、落書きされたってどういうことですか?」
「!」
そう問いかけて、菅谷先生に目を遣る。
わ、ダメだって高桐先生。知らなくていいって。
あたしはそんな高桐先生に、そう思って慌てるけど、でも何て誤魔化していいのかわからないし。
しかもそうやってウカウカしているうちに、菅谷先生が高桐先生に言う。
「いや、実はね、落書きっていうのは…」
「!!…っ、」
しかし…