高桐先生はビターが嫌い。
「あっ…」
「菅谷先生!」
その時。
あたしが慌てて菅谷先生の言葉を遮ろうとしたら、その瞬間に職員室内で誰かが菅谷先生を呼んだ。
その声に、声がした方に目を遣ると、そこには他の先生が電話の受話器を片手に立っていて。
突如、電話で呼ばれたらしい先生は、タイミング良く「あ、ちょっとごめんな」とその場を後にする。
「日向、プリントは放課後に渡すから取りに来て」
「…ハイ」
………た、助かった。
そして菅谷先生はあたしにそう言ってくれたから、あたしも安心して職員室を後にしようとする。
けど…
「あ、ねぇ日向さんっ…」
「!」
その時ふいに、あたしは高桐先生に呼び止められた。
「…ハイ?」
…もしかして、さっきの“落書き”の件だろうか?
そう思って内心ドキドキしていると、そんなあたしに気がついていないらしい高桐先生が、あたしに言う。
「…あの、何が…あったの?」
「!」
「プリントの落書きって、あれどういう意味?もしかして…」
高桐先生は少し言いにくそうにそう言うと、あたしの顔を覗き込むようにして目を合わす。
…さすがにここまでくると、予想くらいつくのかな。
だけど、高桐先生がそう言うのを聞くと、あたしは…
「…や、やだな…先生」
「…?」