高桐先生はビターが嫌い。

少し震える声で、誤魔化した。



「そんな深刻な顔…しないで下さいよ」

「…え」

「ほ、ほら…ジョークですから。ただのジョーク」



そう言うと、「心配無用です」と高桐先生に嘘の笑顔を浮かべる。

…けどきっと、自然には笑えていない。

高桐先生はあたしのそんな言葉を聞くと、やがて「…そっか」と呟いた。



「ジョーク…そう、なんだ…」

「そうですよ」

「うん、それならいいんだ。俺はてっきり…」



高桐先生はそこまで言うと、少し言いにくそうに、言葉を続ける。

あたしの頬のガーゼに、目を遣って。



「……その怪我の、続き…とかかと思ったから」

「…えっ、」

「それ…まだ痛い?よね?もちろん」



高桐先生はそう言うと、心配そうに首を傾げて見せる。

…けど、そんないきなりの高桐先生の言葉に、一方のあたしは内心驚いてしまった。

だって…高桐先生には、この怪我のことを“ヤケド”と言っておいたはず。

…なんで?もしかして、あのあと後藤先生と何か話した?

後藤先生はあたしが言ったこと、信じてなさそうだったから…。

あたしがそう思ってうつ向くと、高桐先生が言う。



「……まぁ、何かあったら遠慮しないで言ってよ。すぐ助ける」

「…、」

「言ったでしょ?俺、ちゃんと力になるから」
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