高桐先生はビターが嫌い。
そう言って、相変わらず厳しい目であたしを見てくる。
しかし、そう言いながらも、その片手には大好物のマカロン。
甘いものが大好きらしい。っていうか羨ましい。欲しい。
あたしが通うこの学校は、先生と生徒がまるで友達のように仲が良い。
だからか先生たちは、あたしが嫌がらせをされると、必ず親身になって話を聴こうとしてくれる。
だから、たまに思う。
あたしは、少しは幸せ…なのかな。
だって世の中には、その先生すらイジメを見て見ぬフリをするケースだってあるみたいだし。
あたしはその国語の先生の言葉を聞くと、しばらく考えたあと呟くように言った。
「…大丈夫です」
「いや、けどな…」
「あたしはこれくらいのことで、いちいち落ち込んだりしませんから」
そう言うと、「失礼します」と。
半ば強引にその場を終わらせて、職員室を後にする。
英語の先生が、慌てて引き留めようとするけれど、それも上手く交わして。
はぁ…疲れた。
そう思いながら制服のポケットからスマホを取り出すと、ラインがきていないか確認をした。
…先生たちには、あの問題集の嫌がらせのことを自分から話したことがない。
実は犯人だってわかってるし、確かにわからないわけもない。
けど言ったところで、嫌がらせが終わるわけないのもわかっているから。
ため息混じりにスマホの画面を見ると、一件だけラインの通知が来ていた。
相手は、昨日のコウ君のようにたまに遊んでいる大学生の人。
画面には、後に後悔することになる「合コン」のことが表示されていた。