高桐先生はビターが嫌い。

…………


たまには夕飯を、キッチンに立って作ってみる。

料理なんて久しぶりだから、ちょっと手間取ってしまったけど。

作ってみたのは、ロールキャベツ。

学校から帰るなり作りはじめて、それが出来上がったのは、19時頃だった。



「…よし、完成」



独り暮らしにしては少し広い部屋でそう呟いて、カウンターになっているそこに出来上がったばかりのロールキャベツが入った皿を置く。

…あ、ところで、高桐先生っていつ来るんだろ。

そう思いながら、棚の引き出しから箸を出していたら…



「…!」



ふいにその時、玄関でチャイムが鳴って。

あたしはロールキャベツにラップをかけると、駆け足で玄関に向かった。

きっと、高桐先生だ!

そう思いながら、覗き穴を覗かずに出てみると…



「…あ、こんばんは」

「!」



やっぱりそこには、あたしの新しい制服を持って来てくれた、高桐先生が立っていて。

高桐先生は、「遅くなってごめんね」と、あたしに制服を渡してくる。

けど…



「…あ、重くない?平気?」

「え?あ…平気ですっ。っていうかほんと、助かりました!ありがとうございます、」

「わ、ブレザー落ちたよ」

「!」



しかし、そうお礼を言ったのも、束の間。

別に持てないわけじゃないのに、ブレザーがすり抜けて床に落ちてしまう。

ああ、せっかく持ってきてもらったのに。

そう思っていると、落ちたブレザーを高桐先生が拾ってくれて。



「…やっぱ俺が持つ」

「!」
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