高桐先生はビターが嫌い。
そう言って、「貸して」と制服を全て高桐先生が腕に抱えてくれる。
なんだか、何から何まで悪いな。
そんなふうに思いながらも、何故か嬉しく思う自分がいて。
?……何で、だろ。
そう疑問に思っていたら、その制服を抱えながら高桐先生が言った。
「これどこに持ってけばいい?」
そう言いながら靴を脱いで、「お邪魔します」と中に入る。
とりあえず奥の部屋に案内したあたしは、元々ハンガーがついた制服を窓際に掛けてもらった。
「…ありがとうございます、」
「いえいえ。っていうかイイニオイすんね。もしかして今から晩ごはんだった?」
「あ、はい。まぁ」
「え、ほんとに!なんかごめんね、飯中に邪魔して。すぐ帰るわ」
「!」
高桐先生は少し驚いてそう言うと、本当に申し訳なさそうに、再び玄関へと向かおうとする。
え、嘘!もう帰っちゃうの!?
だけど一方、夕飯を邪魔された、なんて少しも思っていないあたしは、むしろもう高桐先生がもう帰ってしまうことに何だか寂しさを感じて、すぐに言った。
「っ…あ、あの、先生!」
「…うん?」
「えと、良かったら…なんですけど。ついでに、食べて行きませんか?一緒に」
「え、」
あたしがそう言うと、高桐先生はちょっと驚いたような顔をして、きょとん、として見せる。
そんな高桐先生に、何だか恥ずかしさを感じてしまったあたしは、すぐに否定しようとしたけれど…
「…え、いいの!?」
「あ…は、はい。今日はロールキャベツを作ったんですけど、もし先生が…嫌いじゃなかったら…」
意外にも、高桐先生が次の瞬間嬉しそうな反応を見せてくれて、何だかあたしまで嬉しくなった。
その上あたしがそう言うと、高桐先生は食べ物の好き嫌いがほとんど無いことも口にして。
よかった…久しぶりの料理だったから、ロールキャベツ、多めに作っておいて。