高桐先生はビターが嫌い。

その時。

高桐先生が、ロールキャベツを口にしたあとに、そう言った。



「ほ、ほんとですかっ…!?」



そんな高桐先生の言葉に、あたしは嬉しくてそう問いかける。

すると、高桐先生はそれに頷いて、言葉を続けた。



「うん、ほんとに!ロールキャベツとか久しぶり…っつか、俺って独り暮らしだったり篠樹と二人暮らしとかだからさ、どうしてもコンビニで買って食べることが多いんだよね。
だから、人の手料理ってほんとに久しぶりで。それに、味付けも俺好みだよ」

「!」



高桐先生はそう言うと、本当に美味しそうに食べ進めていってくれて、その後あっという間に完食してくれた。

そんなに喜んで食べてくれると、あたしも作った甲斐があるし、凄く嬉しくなって。

思わず「また何か作りますよ」と言うと、高桐先生が「楽しみに待ってるよ」なんて言ってくれる。

ああ…何か今、すっごく幸せだ。

何だろ…何で、こんなに…。

そう思いながらあたしも食べ進めて、やがてようやく高桐先生の隣で完食した。

まさかあたしの部屋で、誰かとこうしてご飯を食べる日が来るなんて…思わなかったな。

そう思ってふいに何気なく高桐先生に目を遣ると、その時に高桐先生と至近距離で目が合って、思わず心臓が大きな音を立てた。

…少し、顔が熱くなっているのはあたしのジョークか。

そしてまた隣の高桐先生に目を遣ると、先生の頬もまた赤くなっている。…気がして、目を逸らした。

高桐先生と二人でいるこの空間が、何だかすごく心地いい…。
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