高桐先生はビターが嫌い。
…………
ただいま、とやっと帰って来た陽太を、リビングで迎える。
おかえり、とそいつに目を遣ると、陽太はそのままダイニングの椅子に座って。
俺が座っている向かい側。
遅かったね、と言うと、「ご飯食べてきたから」と陽太が嬉しそうに言った。
「え、そうなん。どうりで遅いと思った」
「ごめん連絡すんの忘れてた。っつかマジでうまかったー」
「…」
陽太はそう言うと、軽く伸びをして、欠伸をする。
明日から週末。
俺はしばらくスマホでゲームをしていたけど、ふいにあることを思い出して、陽太に言った。
「あ、そう言えば帰りにDVD借りてきたから、後で一緒に見るぞ」
「え、何の?ってか何系?」
「激怖ホラー。俺これ見たかったんだよね~」
「!」
そう言うと、「逃げんの無しな」と、意地悪な笑みを陽太に向ける。
そして一方、そんな俺の言葉に一瞬にして顔が引きつる陽太。
実は陽太は、昔から心霊系等が物凄く苦手で、究極の怖がりなのだ。
俺の言葉に、陽太は「いやだー!」と大人げなくダイニングテーブルに突っ伏した。
「何でそんなのチョイスしてくんの!」
「いいじゃん見たかったんだし。っつか早く風呂入れ。見る時間が遅くなる」
「だったらいっそ見たくない!」
「あ、そ。じゃあ仕方ないから奈央ちゃん誘って一緒に見ようかな~俺」
「!?」