高桐先生はビターが嫌い。
俺はそう言うと、ゲームを中断して早速奈央ちゃんに連絡しようとする。
けど、陽太はその言葉に反応すると、言った。
「や、ダメダメダメ!ダメだってそんなの!」
「…何で、」
「何でってそりゃあっ…お前と日向さんは、先生と生徒なんだし!」
陽太は必死な様子でそう言うと、「お前だってわかるだろ?」と、俺の目を真剣に見つめる。
…軽い冗談なのにホント騙されやすいねぇ。
俺は内心そう思いながら、冷静に言った。
「…その生徒と合コンしてた教師が何言ってんだか」
「そっ…その時は20歳って言われてたんだから仕方ないじゃん!」
「惚れたって言ってたの誰だよ」
「そ、それも仕方ないんだってば!」
陽太はそう言うと、真っ赤な顔を隠すように、両手で自身の顔を覆う。
…残念だったねぇ。せっかく久しぶりに惚れた女だったのに。
俺はそう思うと、目の前の陽太に「だめじゃん、せんせぇ~」とまたいつもの調子でからかおうとした。
けど。
悪戯に口を開いたその瞬間、陽太がそれを遮るように、自身の顔から両手を離して言った。
「っ…や、でも俺、ちゃんと諦めることにしたから!」
「……諦める?って」
「そう!ほら、俺も教師じゃん!だからそんな、浮わついた感情…持ち合わせてちゃいけないなぁと思って!さすがに、」
「…」
「あ、諦めるっつーか…日向さんのこと、そういう目では見ないことにした!俺、ちゃんと教師として頑張る」