高桐先生はビターが嫌い。

昼間、あたしとラインをしていた幹事のミキヤ君はそう言うと、早速自分の名前を言いながら、にこやかに話す。

ミキヤ君は女のコ大好きで、彼女がたくさんいると聞いた。本命はまだいないらしい。

だけどもちろんこの合コンの場ではそんなことは言わず、そのまま、3人目の男の人の自己紹介で、あたしはその時初めて“彼”に出会った。



「高桐陽太、です」

「!」



その人は…爽やか系の、イケメンな人。

今まで、あたしが遊んだことのないタイプの人だった。

彼は緊張しているのか、あたし達の目を見ずにそう言うと、軽く頭を下げる。

するとそんな高桐くんに、ミキヤ君が言った。



「陽太ー、緊張しすぎだろ!」



そう言うと、可笑しそうに笑う。

だけどその向かいで、「でもイケメン君だね」と笑顔を浮かべるのんのんさん。

その言葉に、高桐くんは更に顔を真っ赤にさせる。



「や、いやいや!そんなことないっすよ!」

「えー?でもすっごくモテそう」

「いやいやいやー…」



そう言って、本当に恥ずかしそうに、今度は両手で顔を覆う彼。

…何だかその仕草がとっても愛らしい。

あたしはそう思いながら、何も知らずに高桐くんに問いかけた。



「じゃあ高桐くんって、好きな人とかいないのー?」

「い、いないっすね。っつか、居たら来てませんよたぶん」

「あはは、そっか!」
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