高桐先生はビターが嫌い。
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何もない週末。
いつもの部屋で、独り、のんびり過ごす。
本当なら、デートの誘いがいくつかあって、スケジュールは埋まっていたんだけど。
何だかこの前から、何故か、誰かとデートをする気になんてなれなくて。
というか、そもそも何もする気が起きなくて、ただただソファーにうなだれる。
「はぁ…」
しかも、ここずっといちいち思い出しては離れないのが、高桐先生のこと。
この前玄関で言われた優しい言葉が頭の中をループしていたり、
そうかと思えば、あたしが作ったロールキャベツを、美味しそうに食べてくれていた横顔が…離れなかったり。
……なんっか、おかしいな。
そうは思うけど、考えないように……と思っても、ほぼほぼ無意味で。
だから、気分転換にスマホゲームでもしようと。
テーブルの上に置いてあるスマホを手にとったら、その時タイミング良く電話が鳴った。
「…!」
突然の電話にビックリして、あたしは思わずスマホを落としそうになる。
だけど何とかそれを阻止すると、スマホの画面を見て、相手を確認した。
…でも、確認して、更にビックリして目を疑った。
だって、あたしに電話をかけてきたのは…
「…いちかわ…」
あの市川だったから。