高桐先生はビターが嫌い。
だけど…あたしは、自分のことを選んでほしくはなかった。
あたしには、市川の孤独が痛いくらいにわかるから。
だから、市川の彼氏には市川のそばにいてあげてほしくて、あたしはそれを伝えて、その彼とはもう会わないようにした。
それなのに…
そのあと、結局二人はうまくいかなくて。
壊れてしまった。いや、あたしが壊してしまったのかもしれない。
その時に初めて見た、市川の涙も…あたしは未だに脳裏に焼き付いて離れないまま。
“寂しいよ…ほんとは、すっごく”
“お願いだから、毎日誰か傍にいて、普通の愛が欲しいっ…”
“あんただってそれがわかるでしょ…っ!?”
あたしが市川に嫌がらせを受けはじめたのは、その言葉を、市川に泣きながら言われてからだった。
「……市川が謝ることないよ」
『え、』
やがて市川が、その頃の話を終えた時。
あたしは、心で思うよりも先に、市川にそう言っていた。
泣きそうな、独りぼっちの部屋のなか。
あたしの声だけが、妙に部屋に響く。
そして、市川があたしの言葉に不思議そうな声をだしたのを聞くと、あたしは言葉を続けた。
「だってそうでしょ。市川のこと、また孤独にさせたのはあたしなんだし」
『…』
「確かに嫌がらせはキツかったけど…仕方ないんだって、思うようにしてたから」
だから、今はもういい。
あたしはそう言うと、顔を伏せる。
それに、その時に嫌な思いをしてるのに、あたしは未だに懲りてないしね。いや、今日はデートには行かないけど。
でも、そう思っていると…
『…何それ』
「え、」