高桐先生はビターが嫌い。
そんな市川の言葉に、あたしは思わず嬉しくなる。
…嘘じゃないよね?
夢…とかでもないんだよね?
そう思うと、あたしは市川に言った。
「…なんか、市川じゃないみたい」
『わ、悪かったね。この前高桐といろいろ話して、あんたと仲直りしたいって思ったんだよ』
「!」
…高桐先生が…。
…やっぱ、そうなのか。呼び出されてたもんね。
いろいろって、どんな話…したんだろ。
市川がこんなに素直に謝ってくるなんて…。
あたしはそう思いながら、市川に言った。
「…そっか」
『…?』
「ありがと。市川が本当に許してくれるなら、あたしもちゃんと仲直りしたい」
『!』
信じていいのかな。
そう思いながらあたしが言ったら、市川は「もちろん許すしかないでしょ」とはっきりそう言ってくれた。
高桐先生がこの前市川にどんな魔法をかけたのかは知らないけど、まさか市川との仲が本当にちゃんとおさまってくれるなんて。
…今度、お礼を言っておかなきゃな。
そのあと、あたしは市川と少しだけ雑談をして、後に電話を切った。
なんか…初めてまともに、同性の友達ができた気分。
あたしはソファーの上で軽く伸びをすると、そのままごろん、と横になった。
嬉しい。本当に、嬉しい…幸せだ。
そんな幸せのなかで、あたしは何だか急に、何故か高桐先生に会いたくなってきた。
今夜もまた何か、作ってみようかな…。