高桐先生はビターが嫌い。
教師という仕事。
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「どうして最近断ってばっかなの」
「…え、」
ある日の日曜の夜。
久しぶりのデートで、あたしは相手の男の人にそう言われた。
彼は、先月誕生日を迎えて22歳になったばかりのヒトシ君。
ヒトシ君とこうしてデートをするのは、数ヵ月ぶりだ。
最近は何故かデートをする気になれない日が続いていて、だけど、今日は久しぶりに誰かとこうして一緒にいたい気分になれたのだ。
「レストランに食事に行こう」なんて誘うから、こうしてついていってみたけど。
あたしはヒトシ君の言葉に、少し考えたあと言った。
「…ごめんね。最近なんだか忙しくって」
「まぁ…この時期だしね。仕方ないけど。俺の誕生日くらいは一緒にいたかったな」
「ごめんってば。なかなか時間がとれなかったの」
「……誰かと、良い出会いでもあった?」
ヒトシ君はそう言うと、少し不安そうな顔をして、あたしを真正面から見つめる。
そしてそう聞かれてふいに脳裏に過るのは、何故か、高桐先生の顔。
その時にまた、高桐先生の優しい顔が浮かんで…。
だけどあたしは首を横に振ると、言った。
「…な、ないない。あるわけないでしょ」
「そっか。ならいいんだ」
「…」
ヒトシ君は安心したようにそう言うと、目の前のお肉を堪能する。
凄くオシャレなレストランで、店内はカップルが多い。
…それなのに、今ここで高桐先生を思い出すなんて、あたしってどうかしてるよな…。
そんなことを思いながらも、だけどそのあともまた考えてしまう。
…高桐先生も、こういうレストラン。来たことあるのかな。
なんて。あたしはずっと、そんなことを考えては、やっぱり高桐先生のことが頭から離れなかった…。