一途な御曹司に愛されすぎてます

　無心な笑顔を見れば、彼の心の内が手に取るようにわかる。

　私が何気なく言った言葉に本心から感謝してくれている。

　私の言葉が、ほんの僅かでも人の役に立ったんだ。

　そう思ったら、自分の卑屈さに落ち込んでいた心が少し軽くなった。


「専務さんは、あの里で過ごす人々のことを心から大切に思っていらっしゃいますよね？　お料理に添えてくださったメモを読んで、そう感じました」


　彼の目が驚いたように見開かれるのを見ながら、あの桜模様の和紙にしたためられた流麗な文字を思い出していた。


『この階上の里でのご滞在が、どうかあなた様の心を癒す特別なひと時となりますように』


　一面の雪景色の中、私の心に小さな春をもたらしてくれたあの言葉。

　人を思いやる真心に満ちた専務さんの気持ちが、里を訪れた人々に伝わらないはずがない。


「私、今でもあの和紙を大切に保管しています」

「矢島様……」