一途な御曹司に愛されすぎてます
「驚かれるのは当然です。私もこんな告白をするつもりはなかった。感謝の気持ちを伝えて、あなたのこれからの幸せを心から願ってお別れするつもりでした」


 私の両手を握る手に力を込め、彼は切々と訴える。

 話を聞きながら、さり気なく手を引っ込めようとしたけれど許してもらえなかった。


「でもレストランで話を聞いて状況が変わった。あなたが彼と別れたのなら、私があなたを諦める必要はない」


 レストランでの話? そういえば専務さんの様子が一変したのは、私が康平と別れた話をした直後からだ。

 つまり彼は、私がひとりになったのを知って交際を申し込む決意をしたって言っているの?


 どうにか事情がのみ込めてきたけれど、いくらなんでもこんな現実味のない話は信じられない。

 やっぱりこれは、専務さんの冗談と受け止めるのが常識的な判断だ。

 それとも彼は、私のことを火遊びにちょうどいい相手だとでも思って、ちょっかいをかけるつもりなんだろうか?


 専務さんがそんな人だとは思いたくないけれど、私が御曹司に見初められたなんて話より、そっちの方がよほど現実味がある。
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