一途な御曹司に愛されすぎてます
 でも、完全に思い詰めた目をしている彼に道理は通用しないようで。

 どこまでも訥々と思いの丈を打ち明けてくる。


「あなたにとっては初対面でも、私にとっては一年越しの想い人だ。それを簡単に断られては立つ瀬がないし、諦められない」


「だからそうやって、ご自分の立場だけで話を押し進められても困るんですってば!」


 両手で頭を抱えたい心境だけれど、その両手をしっかり掴まれているのでそれすらできない。

 真剣に私を見つめ続ける彼と両手の引っ張り合いをしながら、私はため息をついた。

 ……だめだ、これは。きちんと説明しないことには本当に納得してもらえそうにない。


「私、シンデレラのなりそこないなんです」


 自分の恥を晒すのはつらいけれど、そんなことを言っていられる状況でもない。

 それに、正式に交際を申し込んでくれた相手に対して、こちらもできる限りの誠意を尽くすべきだろう。
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