一途な御曹司に愛されすぎてます
「あの、専務さん。私はきちんとお断りしたんですけれど」

 どんどん彼が近寄ってきて、ふたりの距離が狭まる。

 パーソナルスペースを悠々と侵されて、私の胸に黄色信号が灯り始めた。


「せ、専務さん、近いです。もっと離れてください」

「どうぞ悠希と呼んでください。あなたは私の特別な人ですから」

「人の話を聞いてるんですか!?」


 ミスった。せっかく恥を忍んで破談話まで打ち明けたのに、逆に燃え上がらせてしまったみたい!

 ついにソファーのギリギリまで追いつめられて、黄色信号が赤信号に変わって点滅し始める。

 心臓は早鐘のように鳴り響いて、緊張した全身に薄っすらと汗が浮いた。

 待って待って! なにするつもりなの!?


「私は、あなたを逃がすような愚かな男ではありません」


 言葉通り、彼は着々と距離を詰めてきた。
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