一途な御曹司に愛されすぎてます
 逃げ場を失って焦りまくる私の視界は、もう彼の端整な顔しか見えない。

 危険レベルのイケメン急接近に、心臓は限界寸前。

 顔から湯気が出そうな距離を、さらに彼はゆっくりゆっくり狭めてくる。


「覚悟してください。私は、目の前の獲物は絶対に手に入れる」


 耳元でそっと囁かれ、どうしようもなく胸がジンと痺れた。

 このドキドキが警戒によるものなのか、それとも別の意味を持つものなのか、もはや判別不能だ。


 こんな不埒なことをされているのに、シャンデリアの光を受けた彼の黒い瞳の輝きがあまりに綺麗で、怒るのも忘れて見惚れてしまう。

『だめ』とか、『やめてください』とか、拒否の言葉だけが頭の中グルグルして、どうしても喉から出てこない。


「あなたが好きだ」


 甘い言葉に頭の芯が熱くなる。

 明確な目的を持った彼の唇が近づいてくるのを、私は黙って見つめるばかり。

 胸の中は警報アラームが大音量で鳴り響いて、顔は煙が出るかと思うほど熱くて、それでも身動きできない。
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