一途な御曹司に愛されすぎてます
 そう言ってグラスを胸の高さまで持ち上げ、私の目を見て軽く掲げて、唇に運んだ。

「うん。最高に美味い」

 満足そうに微笑んでいる姿をポカンと見ているうちに、ようやく事の次第がのみ込めた私の顔がカーッと熱くなっていく。


 この人、私を試したんだ!

 自分のアプローチに私がどんな反応を見せるか、脈があるのかどうかを見極めたんだ。

 まんまと乗せられたー!


 もう、恥ずかしいやらムカつくやら。顔から火が出るとはこのことか。

 抗議してやろうと思ったけれど、セクハラ云々を喚きたてるのも、自分から目を瞑ったこともあって非常にバツが悪い。

 じゃあ他に、なんて言う?

『キスされるとばかり思って待っていたのに、なんでしないのよ!?』って?

 そんなの言えるわけない!


 しかもこの人、きっとそこまで計算ずくなんだ。私がなにも言い返せないのをちゃんと見越して、あんなことしたんだ。

 うう、返すがえすも悔しい。
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