一途な御曹司に愛されすぎてます
「シャンパンはグラスに注いだ瞬間の香りが格別なんです。ぜひ矢島様にも楽しんでいただきたい」

 白々しい顔でシャンパンを勧めてくる男を怖い顔で睨みながら、心の中で思い切り毒づいた。


 この人どういう性格してるの? 育ちがいいくせに、やることはずいぶん腹黒だ。

 私に告白したのも、やっぱり本当は遊びなんじゃないの?

 こうなったらせめてもの意趣返しに、この高級シャンパンを遠慮なくガブ飲みしてやる!


 私はわざとらしく彼から顔を背けてグラスを手に取り、クイッとあおった。

 そして鼻腔を突き抜ける香りの鮮烈さに目を丸くする。


 これ、すごくいい香り。

 私はシャンパンにはぜんぜん詳しくないけれど、数種類の葡萄がブレンドされている気がする。

 しかも時間が経つと香りが変化して、花に似た艶やかな匂いと豊かな味わいがどんどん喉の奥から追いかけてきた。

 うわあ、素敵。なんていうか、もしも宝石を液体化して飲めたらこんな感じなのかも!
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