一途な御曹司に愛されすぎてます
 このホテルって、実際のお城をモデルにしていたんだ。

 じゃあこのロイヤルスイートは、城主様とかお妃様とかお姫様の部屋を参考にしたのかな?

 どうりで豪華なわけだ。本物の王侯貴族が住んでいた部屋が基になっているんだものね。


「矢島様。申し訳ありませんが急ぎの用件が入りましたので、今夜はこれで失礼いたします」


 電話を終えた専務さんがまた私の隣に座り、名残惜しそうな表情をした。


「あ、はい。今夜はお食事をご一緒してくださってありがとうございました」


 私はシャンと背筋を伸ばし、頭を下げてそう答えた。

 今日はプレオープンなのだから、予想外の細々とした問題が起きているのかもしれない。

 考えてみたら彼はそんな忙しい中で、私と一緒の時間を過ごそうと努力してくれたんだ。

 ちょっと、いや、かなり強引なやり方ではあったけれど、その気持ちには素直に感謝したい。


「すぐに私の代わりにバトラーを寄こします。なんなりとお申し付けください」

「いえ、どうぞお構いなく」
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