一途な御曹司に愛されすぎてます
 私は慌てて首を横に振って遠慮した。

 だってこの豪華な部屋で、燕尾服のバトラーさんに付きっきりでご奉仕されるとか、想像するだけで緊張で胃がよじれそう。


 それでも専務さんは『女性に手酌などさせられない。バトラーを寄こす』と言い張ったけれど、私は丁重に辞退した。

 しぶしぶ承知した専務さんが何度も念を押す。


「なにか用事がございましたら遠慮なくバトラーボタンを押してください。お疲れでしょうから明日の朝食はルームサービスをご利用してはいかがですか? ゆっくりできてお勧めです」


 そう言って彼は私の手を取った。


「私の矢島様への好意は抜きにして、この部屋とすべてのサービスはあなたへの感謝と敬意の表れなのです。どうか受け取ってください」


 一途な声で訴える彼の顔が、シャンデリアの煌びやかな光を受けて繊細な陰影に彩られ、艶やかな魅力を増した。

 私を真っ直ぐに見つめる瞳のひたむきさに、どうしようもなく胸が高鳴る。

 私は彼から目を逸らせないまま、魔法にかけられたように小さくうなずいた。
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