一途な御曹司に愛されすぎてます
 その言葉を聞いた私の胸が、痛いくらいギュッと音をたてた。

 甘い言葉も、彼からの好意も、私が彼に見惚れていることも、ぜんぶが恥ずかしくてたまらない。


 とっさに下を向き、ドキドキしながら視線を泳がせていたら、不意に彼が私の手の甲にキスをした。

 そんな映画のワンシーンみたいなことをされたのは生まれて初めてで、体温が急上昇して頬がカーッと熱くなる。


「あなたが好きだ」


 今日何度目かのその言葉を、彼は私の手の甲の上で囁く。


「この気持ちは本物です。だからどんなに拒否されようと、あなたと再会できたこの奇跡を私は決して無駄にはしない」


 そう言って彼は片手で私のグラスにシャンパンを注いでから、ゆっくりと立ち上がった。

 離れていく手に名残惜しさを感じて、そんな自分の気持ちに戸惑う。


「また明日お会いできるのを楽しみにしています。では」


 私に向かって綺麗な姿勢でお辞儀をして、彼は部屋から出ていった。

 閉じた扉の向こうの彼の姿を見守るように、私はしばらくの間、そこから目が離せなかった。
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