一途な御曹司に愛されすぎてます
 は、階上さん! こんな大勢いる前でそんな大胆な発言するのは控えてください!


「ねえねえ、今の聞いた!? 『あなたが恋しくて追いかけてきました』だって!」


「この人いったい何者なの? 矢島さんとどういう関係?」


 案の定、女性社員たちが興味津々に騒ぎ始めて、私の手にじっとりと冷や汗が滲んだ。

 この状況は、まずい!

 ただでさえ康平の件で散々『シンデレラのなりそこない』と噂の的にされたのに、また標的にされたらたまらない。


 しかも今度の相手は階上グループの御曹司となれば、どれほど面白おかしく騒がれることか。

 今後の展開を想像して震え上がっている私の心情を知ってか知らずか、階上さんが悠々とした足取りで近づいてきて、私の手を取った。


「仕事の調整がついて、やっとあなたに会いに来ることができました。毎晩のようにあなたの夢を見ましたよ」


 彼が素早く手の甲にキスをして、背後の集団に更なるどよめきが走る。
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