一途な御曹司に愛されすぎてます
 私は頬を引き攣らせて手を引っ張りながら、小声で訴えた。


「やめてください。それに、どうしてここがわかったんですか? 私、勤務先なんて教えていませんよね?」


「ああ、それはモニター旅行の顧客名簿を調べて菅原様に連絡したら、すぐに教えてくれました」


 は!? 美千留に連絡した!?

 そんなのぜんぜん聞いてないけど!?

 バッと後ろを振り返ったら、私と目が合った美千留がすごい勢いで視線を逸らした。

 ひたすら目を泳がせている美千留に向かって、私は思い切り念を送りつける。


 みぃ~ちぃ~るぅ~? これはどういうことぉ~?


「いや、だってほら。淳美は納得しているみたいだけど、階上さんの方はぜんぜん納得していないって電話で言ってたから。そこは大人としてきちんと決着つけなきゃね?」


 無言の怒りが伝わったのか、美千留がしどろもどろに白状する。


「でもまさか私も、この人が本当に追いかけて来るとは思わなかったけどね……」


「当然、追いかけてきますとも。なんといっても矢島様は私の運命の女性なんですから」
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