一途な御曹司に愛されすぎてます
 超ご機嫌な表情でまた爆弾発言をした階上さんが、急に声を潜める。


「あの日、部屋に戻って事情を知った私がどんな気持ちだったか想像できますか? この貸しはたっぷり利息をつけて返していただきますから、覚悟してください」


 そのえらくドスの効いた低い声が、臓腑の隅々まで染み渡る。

 お、怒ってる。この人、顔はすごく笑っているけれど、実際はものすごく怒ってる。


「さあ、そろそろディナーに行きましょう。予約を入れていますから」


 人知れず縮み上がる私の背中に、階上さんはニコニコしながら手を回した。


「ディ、ディナー、ですか?」

「はい。実はこの近くにも階上グループのリゾートホテルがあるんです。ご存知ですか?」


 それは、知っている。

 ちょっとここから遠いけれど、湾に面した高台に南欧風のホテルが建っていて、海の眺めの美しさとホテルの外観の優美さが見事に調和した名所になっている。


 もちろん一泊するだけで諭吉さんを大量消費する高級ホテルだから、私は遠目で見たことがあるだけだ。
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