一途な御曹司に愛されすぎてます
 たしかに私は納得してあの答えを出した。

 でもそれはあくまでも私だけの見解で、階上さんの意向はなにも聞いていない。

 個人的なお付き合いを始めようという約束は、ふたりで決めたことなのに、私はそれを一方的に反故にしてしまったんだ。

 たとえそれが最善の答えだったとしても、無礼さの言い訳にはならない。

「ごめんなさい」

 深々と頭を下げて謝罪する私を見て、彼はゆっくりと腕組みを解いて優しく目を細めた。


「私は、あなたに会いたくてたまらなかったんです」


 その声に込められた切なさに胸を突かれた。

 まるで湖みたいに澄んだ目に見つめらて、身動きができなくなる。


「あなたはどうです? ほんのわずかでも、私に会いたいと思ってくれていましたか?」


 ストレートな問いかけに心が震えた。

 その問いからも、彼の視線からも目を逸らすことができずに、私はひたすら瞳を揺らす。

 私の心の奥を覗き込むような彼の眼差しに、胸が大きく波打った。
< 173 / 238 >

この作品をシェア

pagetop